続・基準値・正常値・異常値

 前回、基準値とは、全く健常な人のデータを集めて並べ、下から2.5%、上から2.5%を除いた中間の95%の人の検査結果の下限値から上限値を示したものとお話ししました。ですが、このような数字で切ることに全く意味がないということも説明いたしました。とすると、基準値や正常値はどう考えたらいいのでしょうか。その考え方として、前回はその健常な人々の全データで下限未満、上限を超えた値を異常値とすればいいとも言いました。ですが、まったく健康という基準もなかなかわかりにくいものですし、ご高齢になると全く体の不都合がないという方もそういないと思われます。

 そこで、具体的な患者のその検査結果データから考える方法があります。医学研究では、前向き調査と後ろ向き調査という研究方法があります。前向き調査というのは、ある集団を現在からずっと追っていきます。すると、しばらくして、病気になったり亡くなったりいたします。その方々のデータを現時点から経時的に測定していき、病気になる人や死亡された方の検査結果データを解析し、病気の原因因子や死亡原因因子を見つけ出す研究のことを言います。もう一つの後ろ向き研究というのは、現時点で病気や死亡された方々を把握し、その方々の昔の検査結果データを調べ、その病因や死亡原因を見つけ出す研究のことをいいます。

 これらの研究は、統計データで上2.5%、下2.5%と数字で切るというのではなく、病因や死因の元になったと考えられるデータを分析していくことで、たとえば高血圧症を例にとれば、心筋梗塞で亡くなった方のデータを心筋梗塞にならなかった方のデータを比較して、収縮期血圧が180以上だと、139未満の人の2倍の危険率があるというような結果が出たりするわけです。そこから得られるデータの方が、ただ数字で割り切った値による基準値よりは遥かに信憑性があります。ですが、あくまでこの場合、収縮帰結圧が180以上の人は139未満の人よりは2倍の心筋梗塞になる確率が高いということで、健康を保つには収縮期血圧をいくつまで保てばいいか算定しにくいことになります。このような解析では収縮期血圧が180以上なら、170以上なら、160以上ならというデータがでてきますが、一般的には高くなればなるほど心筋梗塞の危険性は増します。したがって、基準値はいくらと断言することは難しいのです。

 そこで私の見解ですが、確かに収縮期血圧が高くなれば、高くなるほど心筋梗塞の危険性が増すというなら、医師として患者さんへの保健指導として血圧をできるだけ下げるようにその方法を授けるということではないかと感じるわけです。そのためにはまず薬というのはあまりに短絡的で、場当たり的ではあります。肥満の方には痩せること、痩せるためには食餌指導と運動指導が重要であると思うわけです。なるほど、現代人は自動車社会で、ほとんど歩かない生活習慣であるかと思いますが、結論として食餌制限、運動療法しかないと思います。この文章を読まれた方で高血圧の治療薬を飲まれている方は一度、食事制限ならびに運動療法にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。その評価として、体脂肪率の出る10g単位(キログラム表示で下2桁が表示されるもの)を購入して、体脂肪率・体重とそのときの血圧の値(朝昼晩)の値を書き込める表を作成して、壁に貼るなどして記入して見られたらいかがでしょうか。

体重・体脂肪・血圧グラフ

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