IV. マウスの免疫機能に対するカイジ菌質成分の影響

マウスの免疫機能に対するカイジ菌質成分の影響

陳慎宝 丁如寧 (南京医科大学微生物学教学研究室、南京の210029) 「食用菌学報」 1995年第1号 Page 21

抄録 中国古代有名な薬用菌のカイジ(Trametes robiniophila Murr.)は栄養基質で発酵を行い、カイジ菌質を産生し、中から清膏、さらに蛋白多糖類が抽出され、これらは明らかに動物体内の腫瘍を抑制して生命を延長する作用があり、腫瘍抑制率は50%ぐらいに達することができる。清膏で中期、末期原発性肝癌を治療し、総有効率は75.71%に達する。それらは多種の免疫機能を促進する作用があり、良好な生物反応調節剤(BRM)で、そしてさらにその適応症を拡大する可能性がある。

キーワード カイジ;菌種;清膏;生物反応調節剤

 カイジは中国有名な薬用菌で、栄養基質の上で発酵してカイジ菌質を産生し[1]、清膏、さらに多糖蛋白の抽出に使われ、いずれも腫瘍抑制作用と担腫瘍動物の延命作用をもち、腫瘍抑制率は50%ぐらいに達することを実証した。製造されたカイジ散剤は肝癌治療に用い、治療効果は良好で、総有効率は75.7%に達する。カイジ菌質と散剤はいずれも衛生部に漢方薬第1類新薬として許可された。実験[2]では、カイジ菌質から抽出された清膏及び多糖類はマウス腹腔マクロファージの食機能対してと明らかな促進作用をもち、多糖類がさらにヒト臍帯血リンパ球宿主対移植片反応とヒト臍帯血リンパ細胞ERFC形成率を増強し、ヒト末梢単核細胞に対してニワトリニュ-カッスル病ウイルス(NDV)、植物性血球凝集素(PHA)によるa、γインターフェロンの誘発とNK細胞活性の促進にいずれも協同作用を発揮し、抗癌活性の主要な機序は体の免疫機能促進と関連することを示した。

カイジ散剤の抗癌機序をさらに研究し、臨床適応症を拡大するために、カイジ菌質の成分に対して一連の免疫機能を測定した。

1材料と方法

1.1 実験動物と材料

1.1.1 動物昆明ネズミ(南京医科大学動物センターより提供);ICRネズミ(南京中医学院動物部屋より提供)。体重は1820g、雄と雌を無作為に群に分ける。

1.1.2 カイジ清膏と多糖類(南京中医学院薬用菌研究室より提供する);Poly I: C注射液(天津市生物化学制薬);インターフェロン誘発剤(NDV)(当教学研究室で自己用意);マウス標準的なインターフェロン(軍事医学科学院5所);ライソザイムの測定プレート(南京大学生物化学系)。

1.2 方法

1.2.1カイジ清膏、多糖類にゆるマウス血清インターフェロンの測定[3]

 体重1820gのマウス(ICR品種)を選び、各群は6匹、試験群がカイジ清膏(一匹に毎日0.4ml、1mlにカイジ菌質抽出清膏0.8gを含む)、対照群は毎日マウス一匹0.4mlの生理食塩水を経口投与し、7日目に各マウスの腹腔にNDV 0.5mlを注射し、6時間後に眼窩採血し、血清を分離して冷凍保存し、インターフェロンの活性測定に用いる。カイジ多糖類試験群用腹腔注射法、一匹に0.4ml、 (多糖類含有量が10mg/ml);対比群に一群は生理食塩水(一匹に0.4ml、腹腔注射)、もう一群は無処置対照群である。各群は注射後6時間に眼窩採血し、血清を分離、予備用に凍結保存する。インターフェロンの活性は微量細胞培養病変(VSVによる)抑制法で測定し、50%細胞病変の血清最高希釈度の逆数でインターフェロンの効果値とする。

1.2.2 マクロファージの貧食試験[4]

 カイジ清膏と多糖類は生理食塩水でそれぞれ100mg/mlと10mg/mlに配合し、毎日マウスに経口投与し、生理食塩水の対照群で、10日間飼育した後に腹腔内に3%ニワトリの血球、一匹に0.5mlを注入し、2時間後に殺し、腹腔液塗沫、ライト(Wright)染色、100個マクロファージをカウント、食細胞の貧食率を計算する。

1.2.3 血清ライソザイム含有量の測定[5、6]

 同上用量で飼育した白ネズミを10日後に殺してから眼窩採血して血清を分離する。ライソザイムの測定プレートでライソザイムの含有量を測定する。各穴に血清10μl、37℃4時間、ホルムアルデヒドで固定した後に溶菌輪の直径を測り、基準曲線でよって血清ライソザイムの含有量を調べる。

1.2.4 血清抗体価測定[7]

 上述用量のカイジ清膏、多糖類とPoly I:Cでそれぞれマウスに10日間経口投与或は腹腔内注射し、そして第2日目、第7日目に2回チフスワクチンを注射し、第11日目に眼窩採血して血清を分離し、試験管凝集反応で抗体価を測定して、凝集程度によって5級分けて判定する。下記式で抗体積分を計算する: 抗体積分=(1S1+2S2+3S3…..NSN) 式にS前1、2,3…Nはその試験管内の希釈度の指数を表し、S1S2S3…SNはその試験管の凝集程度積分を表す。

1.2.5リンパ細胞転化試験(微量法)[8]

 各群マウスのヘパリン加血液をそれぞれPHAを含む1640培養液に加え、37℃64時間後に、氷酢酸メチル・アルコールで固定し、遠心などを経て、1滴の細胞液を吸いてスライドガラスに自然散らばり、乾燥した後にライト(Wright)染色し、100個のリンパ細胞をカウントし、その転化率を計算する。

2 結果

2.1 マウス血清のインターフェロンに対する影響

 カイジ清膏、多糖類はいずれもマウス血清のインターフェロンを増加、誘発する能力をもつことを研究結果で表した(p〈0.01)。詳しくは表1、表2参照(省略)。

2.2 食細胞の貧食機能に対する影響

 単核食細胞は体の非特異性と特異性免疫においていずれも重要な役割を果たし、マウス腹腔食細胞の貧食作用を通じて、その貧食機能を観察できる。表3は、カイジ清膏、多糖類がマウス食細胞の貧食機能を明らかに増強する作用を示した(p〈0.01〉。

2.3 ライソザイム含有量の変化

 ライソザイムは主に食細胞から由来し、広範に血清とほかの体液に分布し、ある程度で食細胞の機能を反映し、そして食細胞の作用と同じに、非特異性免疫に属する。敏感の小球菌に対するライソザイムの溶菌作用に基づいて、体外で測定することができる。溶菌直径のサイズによってネズミ血清中のライソザイム含有量を測定し、ライソザイムの濃度変化を示す。結果(表4)では、カイジ清膏、多糖類はいずれもマウス血清中のライソザイム含有量を高めることができることを示した(p<0.05)。

2.4 マウスの抗体形成に対する影響

 チフス菌Hとネズミ抗チフス菌抗体との凝集反応程度を観察し、抗体積分によって各試験群の抗体状況を表する。結果(表5)では、カイジ清膏、多糖類処理群と生理食塩水群は非常に明らかな有意差があって(p<0.01)、Poly I:C群と差がなかった。いずれも体の抗体産生レベルを高めることができることを示した。

2.5 細胞免疫機能に対する影響

 通常、細胞免疫が腫瘍免疫にとても重要だと考えられ、本試験はリンパ細胞の転化率を計算してマウスに薬を投与した後に細胞免疫機能の状況を分かることができる。結果は図1をご参考ください。

図1マウスの細胞免疫機能に対するTRM製剤の影響(省略)

 本実験では、ネズミのリンパ細胞をPHAで処理した後に、実験群リンパ細胞の転化率はいずれも生理食塩水対照群より高く(p〈0.05)、各群の実験動物数(各群は4匹)がより少ないからであると考え、さらに試験する予定である。

3 考察

 カイジ菌質は多種類の有機成分と鉱物質元素を含んで、抽出された清膏及びさらに抽出された多糖類はいずれも動物体内で腫瘍抑制作用をもって、その製剤カイジ散剤はすでに腫瘍治療に用いている。本試験結果は、カイジ清膏と多糖類はいずれも明らかにマウス体内のインターフェロンを誘発し、食細胞の貧食機能を促進し、マウス血清のライソザイム含有量抗体産生能力などの作用を高め、各実験群は対照群に比べて著明な有意差或は明らかな有意差があることを表した。マウスリンパ細胞の転化に対して一定の促進作用があって、これらは体の非特異免疫と特異免疫(体液免疫と細胞免疫)を表す重要指標である。 抗体価の測定試験では、PolyI:Cは陽性対照群で、インターフェロンを誘発でき、免疫機能を促進し、広い範囲で抗ウィルス作用がある。経口投与も抗体価を高めることに気づいて、さらに槐耳清膏とPolyI:Cを使い、同時にマウスに経口投与し、抗体価を測定する予定である。もしある程度に高まれば、効果を増加する作用があることを示し、意義はさらに大きい。 以上の研究では、カイジ散剤が一種類の良好な生物調節剤を属することを示した[9]。その抗癌機序は比較的強い免疫促進作用と関与する可能性がある。新しい研究資料では、カイジ清膏と多糖類をアヒルの肝炎ウイルス(DHBV)で試しに使い、アヒル血清中のHBVDNAレベルを著しく下げることができることをしめした。ですから、ほかの疾病に応用することは期待される。

参考文献

1. 庄毅、薬用真菌の固体発酵、中国薬学雑誌、1991,26:8082。

2. 庄毅、カイジ菌の抗癌作用に関する研究、中国薬物学会成立大会の論文抄録、1993.5.226。 3. 杜平で主要編集、インターフェロンの効価測定方法、医用インターフェロン、上海の微生物学会、1980.182。

4. 朱信厚ら、照射されるマウス腹腔マクロファージの貧食消化機能に対する結核ワクチンの影響、上海免疫学雑誌、1984.4.:9。

5. 張宜霞ら、単核マクロファージ系統の貧食作用とライソザイムレベルの感染防止意義に関する研究。中華微生物と免疫学雑誌。

7. 呉鉄ら、マウスの免疫機能に対するアスピリンの影響。湛江医学院学報 1984.(2):27。

8. 呉鉄ら、PHAによるマウスの体内リンパ細胞の転化に関する初歩的な観察、上海免疫学雑誌、1984.4:57。

9. 李康生ら、インターロイキン1の抗腫瘍効果。国外医学免疫分冊、1990.2:57。

《食用菌学報》1995年第1号に掲載

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