医師研究者へ

SEPT4(ヒトセプチン4)ならびにSETP4測定についての解説

人間ドックでは40代後半で30%が陽性とされる大腸癌の早期病変。実際に検診で異常を検知できるのはその1/10にしか過ぎません。9割の方が見落とされ、進行癌になって初めて病院を受診するということが繰り返されてきました。SEPT4測定では、微量の血液で見落としなく病変を察知し、内視鏡検査・治療で済む段階で見つけることができます。また、ポリープ除去等で治療後2週間以内に100%、SEPT4(ヒトセプチン4)値が正常化するため、治癒判定もできるという利点があります。高齢者男性が不安に思う前立腺癌も、生検や切除が必要かどうか、客観的に数値で知ることが出来ます。PSA計測も入っているため、他の検査の併用も不要です。腎癌マーカー、さらに、SEPT4陰性癌マーカーも同時計測しておりますので、1回の採血で得られる情報量はとても多く、既に癌と診断されて治療中の方も、現在の癌の状態や転移や薬剤感受性など、他の情報を合わせて知ることが可能です。

(1)SEPT4は大腸癌・皮膚癌などで作られる

BradedionNorhternFig1

図1. ヒト培養癌細胞抽出伝達RNA中SEPT4. 矢印で示したバンドが、その培養癌細胞中にSEPT4遺伝子が作られていることを示しています。つまり、大腸癌と皮膚癌ではSEPT4遺伝子が、SEPT4タンパク質を作るために作られていることを示しています。(伝達RNA:タンパク質を作るアミノ酸配列を決定するリボ核酸)

 組み換えSEPT4・タンパク質を作成し、それに対するモノクローナル抗体を作成しました。

図2. 培養大腸癌細胞に対する抗SEPT4モノクローナル抗体の反応. 上および左下で緑に光っているのは培養大腸癌細胞で、右下のほとんど光っていないのは培養乳癌細胞です。つまり、作成した抗SEPT4・モノクーロナル抗体は大腸癌に反応し、乳癌には反応しません。つまり、SEPT4は大腸癌では作られているが、乳癌では作られていないことを証明したことになります。

(2)SEPT4は癌の増殖に関係している

図3. 大腸癌培養細胞を皮下注射したヌードマウスに抗SEPT4機能性核酸を導入することによる癌の増殖抑制. リボザイムとマキシザイム: 機能性核酸と呼ばれ、目的とするタンパク質の設計図である伝達RNA(リボ核酸)と相補する核酸を細胞内に導入することにより、伝達RNAを働かなくして、その結果として目的のタンパク質を作らせないようにするもの. ここでの標的タンパク質はSEPT4で、図1のようにalphabetaの二種類あり、その遺伝子配列の前半が一致しているため、alphaのみを働かせなくするためにマキシザイムというリボザイムとは異なる機能性核酸を作成する必要がありました。図から、ヌードマウスに移植した大腸癌細胞は無処理および媒介遺伝子のみが導入されたマウスでは癌細胞が着実に増殖しているのに対し、リボザイムのみのものは細胞増殖をある程度抑制し、リボザイムとマキシザイムの両方が導入されたものは増殖がほとんど認められず、細胞増殖が制止されていることが分かります。これは、SEPT4が作られることを阻止することで癌を抑制することができることを示し、つまり、SEPT4は癌治療の標的となることを示しています。

(3)SEPT4を測定することで癌の発見が可能


図4. 大腸癌・泌尿器癌組織抽出総RNA中SEPT4(ヒトセプチン4).

横軸:横軸各左のリボゾームタンパク質10 (RPL10) は実験コントロール. 右はSEPT4測定. 縦軸:総RNA(リボ核酸)1 μg SEPT4中に含まれるRPL10またはSEPT4伝達RNAの量で、定量RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ鎖反応)で極微量の目的とする伝達RNA量を測定する技術で得られます。コントロールのRPL10は全ての細胞の働きに必要のため、伝達RNA量は多い。SEPT4はRPL10ほど多くは細胞に含まれていませんが、癌では作られていることが分かります。左から2番目と一番右の横軸でほとんど0を示しているのは、良性腫瘍の結果です。このように、すべての大腸癌・膀胱癌・腎癌・前立腺癌でSEPT4が多く作られていることが分かります。

 2. 実際のSEPT4検査

上記の抗SEPT4・モノクローナル抗体を蛍光物質で標識し、血清と混ぜます。SEPT4が癌で作られ、血中に出ていると、その抗体が結合し、そのために抗体単独のときと比べ重くなるため、動きが遅くなります。その蛍光の動きの変化を測定するという全く画期的な測定法、1分子蛍光分析システムを実用化したものです。この技術により、極微量のSEPT4を血中で測定でき、超早期の段階で癌を検知できることがわかります。使用する血液は従来の検診で採取する量の1/5以下で済み、検出時間も1分以内です。最先端エレクトロニクス技術の応用で、癌を切らずに済む段階で発見できることに成功しました。