XVII. カイジ顆粒が胸部悪性腫瘍患者の術後免疫機能に対する影響

 

XVII. カイジ顆粒が胸部悪性腫瘍患者の術後免疫機能に対する影響

鄭夢利、周乃康、梁朝陽、柳曦、王鈺琦新立(解放軍総医院、北京100853)

「中国腫瘍」 2003年第2期  Page 111-113

抄録:[目的]カイジ顆粒(金克)が胸部悪性腫瘍患者の術後細胞免疫機能に対する影響を観察し、胸部悪性腫瘍患者の術後にカイジ顆粒治療を併用する臨床意義について検討する。[方法]33例の胸部悪性腫瘍患者を選び、術後、カイジ顆粒で一つ治療のコース(12週間)を治療し、T細胞亜群CD3、CD4 CD8及びCD4/CD8比値の変化を監視測定し、そして20例の胸部良性疾病のT細胞を監視測定した結果と比較する。[結果]胸部良、悪性疾病術後に細胞免疫機能は正常なレベルと比較していずれも明らかなに下がった。カイジ顆粒で治療した後、悪性腫瘍患者の細胞免疫機能は正常レベルまで回復した。結論カイジ顆粒は胸部悪性腫瘍患者の術後細胞免疫機能を改善することができる。

キーワード:カイジ顆粒;T細胞亜群;細胞免疫;肺腫瘍;食道腫瘍;噴門腫瘍

中図分類番号:R730.53 文献標識番号:A 文章番号:10040242(2003)02011103

近代医学の研究では、体の免疫機能低下は悪性腫瘍発生に主要な要素で、抗腫瘍免疫は主に細胞免疫Tリンパ細胞が抗腫瘍免疫に中心コントロール作用を発揮する。伝統的な術後放射線、化学療法らは悪性腫瘍の治療に一定の効果が得られる。しかし悪性腫瘍患者の術後免疫状態を改善することができない。いかに胸部悪性腫瘍患者の抗腫瘍免疫機能を増強させ、Tリンパ細胞の抗腫瘍免疫効用を高めることは、ずっと胸部外科医者に対して悩ませる難題である。

抗腫瘍新薬のカイジ顆粒(金克)は南京中医薬大学など数十個の科学研究部門より20数年の努力を通じて開発された漢方抗ガン新薬で、1992年に国家衛生部より漢方第1種新薬が批准された[1]。本文では、カイジ顆粒が胸部悪性腫瘍患者の術後細胞免疫機能に対する影響を観察し、術後カイジ顆粒を併用して、胸部悪性腫瘍患者を治療する臨床意義について検討した。

1材料と方法

1. 1臨床病例

悪性腫瘍33例、いずれも我が病院で治療をうけ、術後の病理検査で実証された。男性が28例、女性が5例。年齢 43歳71歳、中間年齢が58歳。肺癌19例(左肺9例、右肺10例)、食道癌7例(中部3例、下部4例)、噴門癌7例。扁平上皮癌18例、腺癌12例、細気管支肺胞癌2例、カルチノイド1例;それぞれ非小細胞肺がんと食道癌病理ステージを分け、I期9例、Ⅱ期17例、Ⅲ期5例、Ⅳ期2例。

良性疾病20例、同時期に治療を受け、術後病理検査で実証された。男性15例、女性5例。18歳70歳、中間年齢が39.5歳。肺部疾病の12例、縦隔の疾病8例。肺気管支拡張症、結核腫、気胸(ブラ・ブレブ)各3例、肺膿瘍、過誤腫、動、静脈畸形各1例、縦隔奇形腫、神経性腫瘍 各2例、縦隔リンパ節結核、胸腺嚢腫、サルコイドーシスと重症筋無力症各1例。

1. 2治療方法

悪性腫瘍患者は術後第1520日目にカイジ顆粒を毎回1パック(20g)、1日3回、食後投与する。12週間連続投与し、一つ治療のコースとする。治療期間にその他の免疫調節剤を使わない

1. 3指標測定

術後第810日目に全患者のT細胞亜群CD3、CD4、CD8、CD4/CD8比値を測定する。治療終了後、10日目に悪性腫瘍患者のT細胞亜群CD3、CD4、CD8、CD4/CD8比値を測定する。アメリカBD会社のフローサイトメトリーでT細胞亜群を測定する。ほか指標の測定:悪性腫瘍患者の治療期間自覚症状と症候、血液ルーチン検査、肝臓と腎臓機能及び薬投与後の反応について監視測定を行う。各種の原因で薬投与を中止した者を本観察から排除した。

1. 4対照設定と統計処理

我が病院臨床検査質の正常値と良性病例を正常対照とする。検査値は(x±s)で表示、統計ソフトウェアSTATISTIC5.0を使い、t検定で統計学分析を行う。

2  結果

本群の悪性腫瘍患者は術後でカイジ顆粒投与過程に血液ルーチン検査と肝臓、腎臓機能が異常変化が現れず、薬投与中止のはいなかった。よく見られる反応は薬投与後、上消化管の調子が悪く、患者からこの薬の口当りがよくないと訴え、主に吐き気がするが、いずれも嘔吐しなかった。

2. 1良性、悪性疾病患者T細胞亜群の変化

胸部の良性、悪性疾病患者は術後の初期にT細胞亜群CD3、CD4がいずれも明らかな変化し、そして著しく正常値の基準より低く(P<0.010.05)、CD8の変化は明らかな有意差はなかった(p0.05)。胸部悪性腫瘍患者は術後の初期にCD4/CD8比値が明らかに変化し、そして著しく正常値の基準より低く(p<0.005)、良性疾病のCD4/CD8比値の変化は明らかな有意差はなかった(p0.05)。表1, 2省略

2. 2薬品を投与した悪性腫瘍患者T細胞亜群の変化

治療前と比べて、胸部悪性腫瘍患者はカイジ顆粒を一つ治療のコース(12週間)を投与した後、T細胞亜群CD3/CD4及びCD4/CD8比値が著明に変化し、明らかな有意差が認められたが(p<0.0010.05)、CD8の変化は明らかな有意差がなかった(p0.05)。カイジ顆粒を一つ治療のコース(12週間)を投与して、胸部悪性腫瘍患者のT細胞亜群CD3/CD4及びCD4/CD8 比値は比較的にはっきり向上され、正常値の基準に比べて明らかな有意差はなかった(p0.05)。すでに正常レベルまで回復したと示した。表2をご参考

3 考察

 体の免疫応答は非常に複雑で、抗腫瘍免疫反応に、細胞免疫反応もあるし、体液免疫反応の参与もあるが、おもに細胞免疫を主とする。悪性腫瘍の発生、発展はT細胞を中心とする細胞免疫機能の失調と密接な関係があると考えられている。T細胞の機能状態はT細胞亜群の相対的な分布にかかる。その調節作用は機能がそれぞれ異なっている亜群より行い、その中にヘルパーT細胞(TH)と抑制性T細胞(TS)及びその比値の動態平衡は、体の細胞免疫レベルの高さを決める重要な一環である[2]。

CD4とCD8はそれぞれTHとTSの前躯体で、CD3はTリンパ細胞の総数を表す。T細胞亜群CD3、CD4、CD8及びCD4/CD8比値を測定することにより、直接に細胞免疫レベルを反映することができる。ですから、T細胞亜群CD3、CD4、CD8及びCD4/CD8比値はT細胞免疫機能の一つ客観指標とパラメーターとすることができ、悪性腫瘍患者に対する予後評価と臨床治療指導に重要な意義を持っている。

本群の胸部良性、悪性疾病患者は術後初期のCD3、CD4が正常値の基準よりいずれも有意に下降した(p〈0.001~0.005〉,患者は手術治療を受け入れた後、体の免疫機能はいずれもある程度に抑えられた。

胸部悪性腫瘍患者は術後初期のCD4/CD8比値が正常値の基準に比べて有意に下降したが(p〈0.005〉、良性病変のCD4/CD8比値の変化が明らかな有意差が認められなかった(p〈0.05〉。胸部良性疾病患者の体の細胞免疫機能は手術の打撃である程度に抑制されることを示した。これはHershmanら[3]の報告と一致したが、良性病変のCD4/CD8比値はまだ正常範囲内で、このような手術損傷により引き起こした免疫機能下降は可逆的なものである[4]。悪性腫瘍患者は手術によって腫瘍負荷を軽減し、解消して腫瘍免疫抑制要素を解除され、体の免疫機能の回復と抗腫瘍能力の向上に有利するが、体の免疫機能は依然として著しく抑制状態にあり、体の腫瘍除去能力は依然としてとても低く、残存の腫瘍細胞は依然として持続存在、生長することができる。これは胡浩ら、徐美栄ら、李俊ら[4G]が観察された悪性腫瘍患者の術後初期に体の免疫機能状態と一致する。悪性腫瘍患者が術後に体の免疫機能回復を加速させ、体の免疫力を高め、抗腫瘍能力を増強することは術後生存率の向上、腫瘍再発の減少に対して重要な措置である。

カイジ顆粒は1種類の新しいタイプの真菌類抗腫瘍の新薬である。基礎研究では、この薬が腫瘍細胞の生長を抑制するだけではなく、体の免疫力を増強することもでき、1種類の比較的理想的な免疫増強剤であることを示した[1]。この薬は臨床で消化器系、血液系の悪性腫瘍の治療に使われ、明らかな治療効果があり、特に中期、末期肝臓癌に明らかな腫瘍生長抑制作用がある[1,7-10]。

本群の胸部悪性腫瘍患者は術後にカイジ顆粒を併用して一つ治療のコースを治療した後、CD3、CD4及びCD4/CD8比値は比較的に明らかに高められ、治療前と比べて有意な変化が見られた(p<0.001~0.005〉。正常値の基準と比べて明らかな有意差が認められなかった(p>0.05)、カイジ顆粒で一つ治療のコースを治療した後、悪性腫瘍患者の細胞免疫機能はすでに正常レベルまで回復、接近したことを示した。

本群の病例は良性、悪性或いはカイジ顆粒治療前、治療後にもかかわらず、CD8の変化がいずれも明らかな有意差が認められなかった(p0.05)、手術後、患者免疫レベルの下降及びカイジ顆粒治療後、患者の免疫レベル上昇はいずれもTS細胞と明らかな相関関係はなく、TH細胞の変化と正の相関関係があった。

本群の臨床観察を通して、カイジ顆粒はTH細胞の成熟、分化を促進し、体の免疫機能を調節すると同時に、抑えられた免疫機能に部分的に回復させ、最後的に免疫機能を上昇させ、体の抗腫瘍能力を増強する。このカイジ顆粒が治療作用を発揮するメカニズムの一つ可能性で、臨床で応用を進め、更に検討する必要がある。

参考文献

[1] 庄毅 真菌抗がん剤カイジ顆粒の開発[J]中国腫瘍、1999,8(12):540543。

「英文文献」

[4]李俊、梁偉、張敬傑ら.胃癌患者手術前後でのT細胞亜群変化[J].中華一般外科雑誌、1998,13:216218

[5]胡浩、高尚志、仲凡ら.肺癌患者手術前後での末梢血Tリンパ細胞亜群変化の分析[J].湖北医科大学学報、1994,15:343345.

[6]徐美栄、沈洪黛、陳瑞新.消化器腫瘍患者の周手術期免疫機能の測定[J]南通医学院学報、1994,14:1315.

[7]趙文生、金克カイジ併用化学療法が再発性非ホジキンリンパ腫に対する治療効果[J] 中国腫瘍、1999,8(5):237238。

[8]邱仲川、陳佩、胡.慢性薬品(顆粒)球性白血病の細胞因子に対する金克カイジの影響[J].中国腫瘍.200,9(12):577578

[9]趙紅星、張国政.金克カイジ散剤が老年末期肝臓癌を治療する短期治療効果の観察[J].中国腫瘍.2001,10(5):305306.

[10]葉亜新.マウスの骨髄、脾臓細胞小核形成に対する抗がん剤の金克(Jinke)の効果[J]癌化.畸形.突然変異、2002,14:2729.

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