XI. カイジ顆粒の食道癌細胞アポトーシス及び免疫機能への影響

XI. カイジ顆粒の食道癌細胞アポトーシス及び免疫機能への影響

李保慶、李勇、王其彰、劉俊峰、王福順

(河北医科大学第四病院、河北 石家荘 050011)

「中国腫瘍」2003年

抄録:[目的]カイジ顆粒が食道癌患者の腫瘍細胞アポトーシス作用と免疫機能に対する影響について検討する。[方法]2000年8月2002年1月の間、食道の扁平上皮癌40例。試験群20例、手術前にカイジ顆粒を20g/回 x 3回/日、1520日間投与し、術後第8日目から引き続き30日間投与する。対照群20例、手術前から実験終了まで化学療法薬と免疫力賦活薬を投与しなかった。フローサイトメトリー技術で腫瘍細胞のアポトーシスを測定し、電子顕微鏡で腫瘍細胞アポトーシス形態の変化を観察し、末梢血液Tリンパ細胞好銀性染色技術(AgNORs)で末梢血Tリンパ細胞の活性を観察し、SAP法でT細胞亜群CD4+、CD8+、CD4+/CD8+を測定する。SPSS10.0統計分析。[結果]実験群と対照群の腫瘍細胞アポトーシス率はそれぞれ(7.1±2.9)%、(5.2±2.6)%,で、両者を比べて明らかな有意差が認められた(p<0.05)。電子顕微鏡観察で、実験群の腫瘍細胞は明らかなアポトーシス形態の変化があった。実験群と対照群は術前、術後第14日目に末梢血Tリンパ細胞AgNORsとT細胞亜群CD4+、CD8+、CD4+/CD8+と比べて明らかな有意差が認められなかった(p>0.05);術後45日目に両群が比べて明らかな有意差が認められた(p<0.05)。実験群では手術前後の末梢白血球を比べて、明らかな差が認められなかった(p>0.05)。 結論カイジ顆粒経口投与により、食道癌患者腫瘍細胞のアポトーシスの増加を引き起こし、患者の免疫機能に対して調節作用を果たし;しかも明らかな骨髄抑制の副作用がない。

キーワード:カイジ顆粒;食道腫瘍;免疫機能;細胞アポトーシス

中図分類番号:R735.1  文献標識番号:B  文章番号:10040242(2003)12075202

近代的な腫瘍免疫理論の発展に従って、人々は抗腫瘍作用をもつと同時に体の免疫力を調節でき、体の自身抗腫瘍機能を増強できる漢方薬の研究開発に力を尽くしている。特に手術前後の患者は手術など要素による不利な影響のため、わりに毒性の大きい化学療法の薬物応用が制限された。カイジ顆粒は南京中医薬大学からカイジ子実体から分離抽出したもので、その主要な活性成分は1種類の多糖蛋白(PST)である[1]。本研究は食道癌患者にカイジ顆粒を手術前後に投与し、食道癌の腫瘍細胞アポトーシス作用と患者免疫機能に対する影響について研究した。

1 材料と方法

1.1 研究対象 選んだ病例は2000年8月2002年1月の間に河北医科大学第4病院に入院した患者で、病理検査で全部食道の扁平上皮癌であることを実証した。すべての病例はⅡⅢ期(pTNMステージ)で、臨床検査で遠隔転移癌巣が見られなかった。平均年齢は56.59歳で、年齢範囲は40歳76歳。実験群が20例、その中に男性10例、女性10例、手術前にカイジ顆粒20g/回 x 3回/日、1520日を投与、術後第8日目から引き続き30日間経口投与した。対照群は20例、その中に男性10例、女性10例、手術前から本実験終了までいかなる化学療法薬と免疫力向上薬物を与えていない。

1.2 主要な試験用試薬、器具と方法 FACS420型フローサイトメトリー(アメリカBD会社);日立7500型透過型電子顕微鏡(日立);KL型腫瘍免疫画像解析装置 (北京健尓康公司);マウス抗ヒトCD4+モノクロ抗体、ビオチン標記の羊抗マウスⅠgG(IgG/BIO)、アルカリ性ホスファターゼ標識ストレプトアビジン (SA/AP)(ZYMED会社)。 フローサイトメトリー技術で細胞アポトーシスを測定し、透過型電子顕微鏡でアポトーシス形態を観察する場合、厳格に操作手順に沿って行う。細胞免疫機能は末梢血リンパ細胞好銀染色法(AgNORs)とSAP法で測定し、取扱説明書に準じて操作する。アメリカBECKMANCOULTERの全自動分析装置で血細胞数をカウントする。

1.3 統計学処理 統計学処理はSPSS10.0統計ソフトで行い、t検定と二元配置分散分析 ・ 検定を使い、P<0.05の時に明らかな有意とする。

2 結果

2.1 アポトーシス率

 実験群のアポトーシス率は(7.1±2.%)、対照群の腫瘍細胞アポトーシス率は(5.2±2.6%)で、両群を比べて明らかな有意差が認められた(P<0.05)。

2.2 電子顕微鏡での形態

 実験群の腫瘍細胞は明らかな細胞核膜周辺にクロマチンが凝集する現象、細胞核濃縮 、細胞質濃縮、いずれも細胞アポトーシスの典型的な形態変化である。

2.3 末梢血免疫機能の変化

 末梢血Tリンパ細胞(AgNORs)及びT細胞亜群について実験群と対照群の術前比較について、表1をご参考ください。両群を比べて明らかな有意差がなかった(P>0.05)。術後第14日目、両群を比べて明らかな有意差がなく(P>0.05)、表2をご参考ください。術後第45日目、両群を比べて明らかな有意差が認められた(P<0.05)。(表3参照、生薬)

2.4 末梢血細胞

 実験群と対照群は術前、術後14日目、術後45日目に3回の末梢血白血球、赤血球と血小板を比較して明らかな有意差が認められなかった(P>0.05)。

3 考察

本研究は比較的温和な抗腫瘍新薬のカイジ顆粒を用いて、手術期の食道癌患者に補助治療を行い、手術期の腫瘍細胞生長拡散を制限、減少させ、患者の創傷された免疫機能を調節し、体自身の抗腫瘍作用を増強し、手術で引き起こした免疫損傷による腫瘍細胞の拡散を防ぐ。

本研究では、食道癌患者がカイジ顆粒を45日間経口投与した後、腫瘍細胞アポトーシス率を増加させ、カイジ顆粒未投与の食道癌患者に比べて明らかな差が認められた。文献報告では[2,3]、食道癌細胞の自然アポトーシス率がアポトーシス率に比べてわりに高い。手術期にカイジ顆粒投与により、腫瘍細胞アポトーシスを引き起こし、腫瘍細胞の成長を制限し、患者の術後生存率を高める見込みがあることを示した。 悪性腫瘍患者の免疫機能は正常者より低く、そして症状の発展とともに、免疫機能はいっそう下がり、手術と麻酔は更に体の免疫機能損傷を強めることができる[4,5]。研究では、食道癌患者はカイジ顆粒を経口投与し、術後14日目に対照群と比較して、免疫機能の増強がみられなかったが、カイジ顆粒投与の時間は比較的に短いからと思われ、また、術後8日間にカイジ顆粒を投与できなく、実験群患者が連続投与できなくなり、さらに食道癌手術、全身麻酔により体の免疫機能に対する影響を加え、手術後、一連の複雑な要素は免疫機能に対する影響と関係する。術後に規則正しくカイジ顆粒を投与できる時間の増加とともに、手術、麻酔が体の免疫機能に対する影響を排除し、術後45日目まで、実験群患者の免疫機能は対照群より明らかに高まり、カイジ顆粒が食道癌患者の免疫機能に対して一定の調節作用があることを実証した。 本実験では、カイジ顆粒を投与した食道癌患者群に対して投与前、投与中、投与1コース後の末梢血液細胞について比較した。末梢血白血球、赤血球と血小板はいずれも正常値範囲内で、3回を比較して明らかな差がなかった。カイジ顆粒の投与は明らかな骨髄抑制作用がないと考えられている。 要するに、本実験を通じて、カイジ顆粒は食道癌細胞のアポトーシスを誘発し、患者の体に対して一定の免疫調節作用があることを示した。しかしカイジ顆粒の抗腫瘍作用メカニズム、及び周手術期にカイジ顆粒投与は食道癌手術の予後に対する影響について、さらに研究する必要がある。

参考文献

[1] 庄毅.抗ガン新薬カイジ散剤の研究[J].中国薬学雑誌、1998,33(5):273275.

[2] Ikeguchi M, Sakatani T, Ueta T.The expression of thymidine phosphorylase suppresses spontaneous apoptosis of caner cells in esophageal spuamous cell carcinoma [J].Pathobiology, 2001,69(1):3643.

[3] Hibakita M, Tachibana M, Dhar DK. Spontaneous apoptosis in advanced esophageal carcinoma:its relation to Fas expression[J].Clin Cancer Res,2000,6(12):47554759.

[4] 程邦昌、陳克能、梅強ら.食道癌患者末梢血液Tリンパ細胞亜群、腫瘍壊死因子の変化及び関連因子に関する研究[J].中華実験外科雑誌、1998,15:226228.

[5] 侯建民、陳克能、王社軍ら.全身麻酔下、経胸部食道切除の前後に患者末梢血液TNF、Tリンパ細胞と亜群の変化[J].中華麻酔学雑誌、1998,18(5):283285

カイジ顆粒 論文翻訳集に戻る