XII. Ⅲ期胃癌術後化学療法と金克カイジを併用する治療効果

XII. Ⅲ期胃癌術後化学療法と金克カイジを併用する治療効果

姚建高、韓少良、朱冠宝、周宏衆、陳哲京 (温州医学院付属第1病院、浙江 温州325000) 「中国腫瘍」 2003年

抄録:[目的]金克カイジ+MF(マイトマイシン+フルオロウラシル)方案が病期Ⅲの胃癌根治術後に対する治療効果を検討する。[方法]126例の胃癌を根治的に切除した患者を無作為に対照群(n=66)と試験群(n=60)を分けて、前者はMF方案で、後者は金克カイジ+MF方案で治療する。それぞれの不良反応、骨髄機能、肝機能と生存率の情況を観察する。[結果](1)試験群化学療法の不良反応が対照群より軽い(P<0.05)。(2)対照群の肝機能指標ALT、ASTの上昇及びアルブミンの低下はいずれも試験群より著明である。(3)試験群の5年間生存率(46.7%,28/60)は対照群より明らかに高い(31.8%,21/66)(P<0.05)。[結論]マイトマイシン+フルオロウラシル+金克カイジは胃癌の化学療法耐受性及び生存期間延長を高めることができる。

キーワード:金克カイジ薬品(顆粒剤);胃腫瘍;生存率;総合治療

 中図分類番号:R735.2;R730.53 文献標識番号:B 文章番号:10040242(2003)10060603

 進行期の胃癌患者の予後に高めるために、早期に術後補助化学療法が必要である。このような患者はある程度の免疫機能低下を伴い、手術の創傷及び術後補助化学療法により、患者の免疫機能がいっそう低下させる[1-8]。ですから、免疫製剤を併用する化学療法は体の免疫機能を高めると同時に患者の生存期間を延長できると期待されている。このために、作者は金克カイジ薬品(顆粒剤)(以下が金克と略称する)を併用するマイトマイシン(MMC)の+フルオロウラシル(FT207)のMF方案で病期Ⅲの胃癌患者根治術後の補助治療を行い、初歩的な結果を次の通りに総括する。

1材料と方法

1.1 一般材料 1998年1月2001年4月の間に施行された胃癌根治術(病期Ⅲ)患者126例、その中に男性78例、女性48例。年齢:最大71歳、最小36歳、平均値61.3歳。術後、無作為に上記の病例を両群に分ける:試験群(n=60例)は術後に金克+MMC+FT207方案の免疫化学療法、対照群(n=66例)は術後にMMC+FT207方案の化学療法を補助的に行った。

1.2 病例の選択 患者年齢 75歳以下、根治性胃切除術を行った症例;術中の所見及び術後の病理検査結果によって病期Ⅲと判定された癌の病例;一般状態はKarnofsky採点基準で50点以上;術後生存期間は少なくとも3ヶ月以上と予測された。

1.3 術後の補助薬投与方法

試験群試験群:手術の当日と術後第1日目にMMC10mgを静脈注射し、以後、3ヶ月ごとにMMC10mgを 計8回静脈注射した;術後2週間から金克カイジ薬品(顆粒剤)の6パックとFT207 600mg/dを経口投与し始め、2年連続で経口投与した。

対照群:試験群と同じように、手術の当日と術後第1日目にMMC 10mgを静脈注射し,以後、3ヶ月ごとにMMC 10mgを計8回静脈注射していたが、術後2週間からFT207, 600mg/dだけ経口投与していた。

1.4 観察項目

入院後第1日目、術後第1日目、術後2週目と術後で5週目にそれぞれ血液ルーチン検査、T細胞亜群、トランスアミナーゼ及び血漿蛋白質を検査した。 術前、術後2週目と術後5週目に患者の飲食情況、吐き気と嘔吐、全身無力、腹部膨満感及び下痢をそれぞれ記録する。

1.5 データ処理 両群の資料はX2検定で統計学処理を行う。

2 結果

2.1 一般症状の改善情況 補助化学療法の開始時(術後2週目)、試験群と対照群の一般状態はほぼ同じである。術後5週目(化学療法3週目)に一般状態の評価結果は、試験群が全身無力、顔色蒼白、食少納差(食べる量が少なく、消化不良)、吐き気と嘔吐、食後腹部膨満感、下痢などの症状は対照群より明らかに良好で、しかも両群間に明らかな差が認められた(p〈0.05〉(表1 省略)。

2.2 末梢血液像の変化情況

補助化学療法開始時(術後2週目)、試験群と対照群の末梢血液像がほとんど差はない。両群間に明らかな差がないけれども、試験群術後5週目(化学療法3週目)の時、末梢血液中の白血球と血小板の減少はいずれも対照群より軽く、特に骨髄抑制も対照群より軽い(表1 省略)

2.3 T細胞亜群の変化

MMC+FT207+金克カイジ試験群患者の免疫機能は術後2週目の時に対照群とほぼ同じであるが、化学療法開始から術後第5週目の時、対照群の免疫機能は少し下がり、試験群のT細胞亜群は補助化学療法に影響せず下がらなく、かえって少し上がった。金克カイジ薬品(顆粒剤)は体の免疫機能(表1省略)を高めることができると示した。

2.4 肝機能への影響

術後で2週目(即ち化学療法開始)の時に、試験群と対照群の肝機能異常率、総蛋白及びアルブミンのレベルはほぼ差がなかった。しかし術後5週目(即ち化学療法開始3週間後)、対照群のアラニンアミノ基転移酵素(ALT)/アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (AST)上昇のある病例は10.6%(7/66)、総蛋白質及びアルブミン下降は4.8%(3/63)に占め、試験群はそれぞれ5.0%(3/60)、1.7%(1/60)及び3.3%(2/60)を占める。金克カイジ薬品(顆粒剤)はグルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼの降下、肝臓細胞損失の減少、肝臓細胞機能回復の作用を持つことを示した(表1をご参考)。

2.5 術後生存期間と補助治療

本群病例はすべて追跡調査を行っており、試験群の3年間生存率が51.7%(31/60)、単独化学療法群の3年間生存率が53.0%(35/66)で、大きな差がなかったが、前者の5年間生存率が46.7%(28/60)単独化学療法の31.8%(21/66)より高く、両者の間に明らかな有意差が認められた(p<0.05)。

3 考察

金克カイジ薬品(顆粒剤)は国家第一種新薬で、カイジ菌質の抽出物で、多種類の有機成分、10数種類の鉱物質元素を含み、その主要な成分は多糖蛋白(PST)である。現在の基礎臨床研究は、金克カイジ薬品(顆粒剤)が肝臓癌、肺癌、食道癌、大腸癌、膀胱癌、腎臓癌、白血病と胃癌などに対して独特な直接抗ガン作用と明らかな免疫増強調節作用をもつことを示した。その免疫調節作用メカニズム:

①マクロファージ或は好中球を活性化する;

②ナチュラルキラー細胞(NK)を活性化する;

③Tリンパ細胞分裂、増殖、成熟と分化を促進し、しかもT細胞の割合を調整する;

④体液免疫を高める;

⑤a、γインターフェロンの誘発と産生;

⑥いくつかの細胞活性化細胞因子、例えばインターロイキン2(IL2)とNK細胞活性化因子など、関連の免疫細胞をいっそう活性化して作用する[58]。

姚亜民ら[6]は金克カイジ散剤を併用する化学療法で非小細胞肺がん 41例を治療し、単独に化学療法で非小細胞肺がん 39例を治療して、比較観察した。金克カイジ散剤が化学療法の損傷を受けられないように患者の免疫機能を保護し、免疫機能が両群間に明らかな差が認められたが(p〈0.05〉,短期治療効果とその他の不良反応などの面で、両群間に明らかな差はなかったと報告された。張玲ら[7]は原発性肝臓癌63例を無作為に治療群と対照群に分け、対照群は単に手術切除或は肝動脈そく栓化学治療を行い、治療群は手術切除或は肝動脈そく栓化学治療と金克経口投与を併用し、治療群の末梢血液液像に白血球の変化、消化不良反応、AFP下降、SGPT上昇とNK細胞活性を見られ、いずれも対照群より良好である。本文では、根治性切除された病期Ⅲの胃癌病例を術後で無作為に試験群(MMC+FT207+金克カイジ薬品(顆粒剤))と単独化学療法(MMC+FT207)を分けて補助治療を行い、結果として、試験群患者の全身無力、納差(消化不良)、吐き気、嘔吐及び腹部膨満感がいずれも比較的に軽く、同時に白血球と血小板減少などの骨髄抑制はいずれも対照群より軽く、金克カイジ薬品(顆粒剤)投与によって、患者の免疫機能を保護、増強させられ、しかも抗がん剤による肝臓の損失を減少することができる。  Nakazatoら[4]は根治性切除された胃癌病例(n=262例)を術後で無作為に単独化学療法群(MMC+5 ̄Fu経口投与)と免疫化学療法群(MMC+5Fu経口投与+PSK)を分けて比較試験を行い、その中に化学療法をそれぞれ10週間行い、しかもPSKで36ヶ月治療した。すべての病例は5年以上追跡調査を行い、免疫化学療法群の5年が無病生存率は70.7%であったが、単独化学療法群は59.4%で、両群間の明らかな差が認められた(p<0.01)。劉星野ら[8]は、金克カイジ薬品(顆粒剤)を併用するFAM方案で末期胃癌38例を治療し、治療群の6ヶ月生存率が61.1%(12/18)で、対照群が45%(9/20例)で、両群間に明らかな差が認められた(p<0.05)と報告した。本群追跡調査の結果、試験群の5年間生存率が46.7%(28/60)で、対照群の31.8%(21/66)より良好であった(p<0.05)。

参考文献

[1] 韓少良、邵永孚 癌化学治療の毒副反応と処理[M].上海:復旦大学出版社上海医科大学出版社、2001.113121.

「英文文献」

[5]施紅中、茅冬梅、金克カイジ散剤の薬理について初期解析[J].上海漢方医薬雑誌、1995,(1):9

[6]姚亜民、馬智勇、趙艶秋 金克カイジ散剤と化学療法を併用する非小細胞肺がん41例の治療[J] 中国腫瘍 2001、10:184185。

[7]張玲、韓風、馮洪波.金克カイジが原発性肝臓癌治療での応用[J].中国腫瘍、2000,9(8):表紙三.

[8]劉星野、周黙巍、徐楓ら.金克カイジ薬品(顆粒剤)とFAM方案を併用して末期胃癌38例を治療する[J].浙江腫瘍、1999,5:189

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