III. カイジ清膏は体外で血管形成を抑制する実験研究

III. カイジ清膏は体外で血管形成を抑制する実験研究

許戈良 か衛東 馬金良 余継海

(安徽省立病院一般外科、合肥の230001) 「中国薬理学通報」 2003年 12期

抄録:[目的]カイジ清膏(カイジ・エキス)が体外で血管内皮細胞の新生血管造成に対する抑制作用とそのメカニズムを検討する。[方法]MTT実験、フローサイトメトリー、Matrigel実験を応用し、体外でカイジ清膏が内皮細胞増殖因子(VEGF)によるヒト誘発された臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)の増殖と血管に分化する能力に対する影響について研究する。[結果]濃度が0.110g/Lの場合、カイジ清膏は明らかにVEGF誘発の内皮細胞増殖を抑え、用量効果関係を呈する:フローサイトメトリー検査で、カイジ清膏は内皮細胞がS期からG2/M期に入ることを阻止する;カイジ清膏濃度は1g/Lの場合、内皮細胞が体外で管構造形成を抑制できる;濃度は10g/Lの場合、内皮細胞が体外で管構造形成能力を完全に遮断されることが認められた。[考察]カイジ清膏は体外で血管内皮細胞の新生血管造成に対する抑制作用があり、そのメカニズムはS期停滞にことと関係があるかもしれない。

キーワード カイジ清膏;内皮細胞;血管形成;細胞周期

中国図書分類番号R273;R282.71;R322.12;R329.24;R329.25;R977.6 文献標識番号:A文章番号 10011978(2003)12141003

カイジ菌種(カイ栓菌)と生産技術

 カイジ清膏(extract of hyuaier, EFH)は薬用真菌のカイジ(Trameyes Murr)の抽出物で、主要な活性成分は多糖蛋白で、多種類のアミノ酸と微量元素を含む[1-2]。すでに広範的に臨床の腫瘍治療に応用した[25]。その抗癌機序をさらに検討するため、私達はカイジ清膏が体外で血管内皮細胞の新生血管造成に対する影響を研究した。

1材料と方法

(1) 薬品と試薬

 カイジ清膏;MTT(テトラゾリウム塩)はSigma会社から購入;VEGH(Peprotech, イギリス)、血清を含まないDMEM培養液で10ig/Lに調整し、20℃に保存しておく;マトリゲル(matrigel)(成長因子減少型)はBecton Dickinson会社の製品である。

(2) 器具

 BB5060型CO2はインキュベータ(アメリカHeraeus会社);BioCell  htl型の全自動ELISA測定装置 (オーストリア);CK型倒立顕微鏡(Olympus);フローサイトメトリー(Coulter)。

(3) HUVECsの培養と鑑定

 長さ30cmの新鮮な新生児臍帯を無菌で採集し、Jaffeなどの方法を参考にし、HUVECsをルーチン培養する。細胞が単層まで成長してから、酵素分散して、510日継代培養した後に、HUVECsと融合し、倒立顕微鏡で観察して培養されたHUVECsが敷石模様を呈した単層配列である。フローサイトメトリーでvWFとCD31因子を測定し、内皮細胞であることを証明した。実験は35世代の内皮細胞を使う。

(4) MTT実験

 対数生長期のHUVECsを取り、1×10^8細胞/Lで96ウエルプレートに接種し、100-1/well,各群ごとに5つの平行孔を設ける。10%FBS、VEGF(10ig/L)を含むDMEM培養液に24h培養した後(5% CO2、37℃)、各濃度のカイジ清膏(0、0.01、0.1、1.0、10g/L)の培養液を100μl加え、引き続き48h培養する。MTT液を加え、4h培養した後、上清液を廃棄し、100μl /wellのジメチルスルホキシドを加え、マイクロ振動計で5分間振動する。検出波長が492nm、励起波長が630nmで、ELISA測定装置で各孔の吸光度(A値)を測定する。下記の式によって細胞成長抑制率(Inhibitory Rate, IR)を計算する:IR=[(正常対照群A値投与群A値)/正常群A値]*100%。

(5) フローサイトメトリーで細胞周期を測量する

 HUVECs単細胞懸濁液を接種した後、血清を含まないDMEM培養液(0.1% BAS、VEGF 10μg/L含有)を変えて24h培養し、細胞周期を同期化させる。カイジ清膏を(1.0g/L)含むDMEM培養液、5% CO2、37℃の環境下で48h培養した後、細胞を採取し、単細胞懸濁液を作り、体積分率が70%の冷アルコールで固定する。RNaseで消化、ヨウ化プロピジウム(PI)で30分染色し、サンプルをフローサイトメトリーで測定する。

(6) Matrigel実験

 溶けた増殖因子減少型Matrigel 100ilを24ウエルプレートに加え、37℃ 1時間孵化してMatrigelをゲルに重合させる。1×10^8/Lの細胞をゲルの上に接種し、100μl /well,各濃度のカイジ清膏(0、1.0、10g/L)の血清を含まないDMEM液体(10μg/L VEGF、0.1% BSA),37℃、5% CO2、インキュベータで48時間孵化した後、倒立顕微鏡で、カイジ清膏が体外で内皮細胞血管造成に対する影響を観察する。

(7) 統計処理 両標本平均値の比較はt検定で行い、群間は分散分析で処理する。

2 結果

(1) カイジ清膏がHUVECs体外増殖に対する抑制作用

 濃度が0.110g /Lの場合、カイジ清膏はVEGF誘発のHUVECs増殖を明らかに抑制し、カイジ清膏薬物濃度の増加とともに、内皮細胞成長抑制率も増加し、用量効果関係を呈する(表1省略)

(2) カイジ清膏がHUVEC8細胞周期に対する影響

 HUVECsはカイジ清膏(1.0g/L)で48h作用した場合、対照に比べてS期細胞の割合は明らかに増え、G2/M細胞の割合は明らかに減少したが、G0/G1期の細胞増殖は影響を受けない(Tab2)。フローサイトメトリー検査により、カイジ清膏は内皮細胞がS期からG2/M期に進入するのを阻止することができ、S期停滞を生じる。

(3) カイジ清膏がVEGF誘発のHUVECs分化に対する影響

 HUVECsが20~24h内にMatrigel表面に付着:VEGF誘発のもとで、HUVECsは24~28時間内に枝状の毛細血管様構造に分化しる(Fig1A)。カイジ清膏の濃度が1g/Lの場合、VEGF誘発のHUVECs管様構造の分化を抑制できる(Fig1B);濃度は10g/Lの場合、完全に体外でHUVECs管様構造の分化能力をブロックできる(Fig. 1C省略)。

3 考察

 腫瘍の生長と移転は血管形成に依存する。腫瘍の血管形成は内皮細胞、腫瘍細胞とマイクロ環境の相互影響による結果で、その中に血管内皮細胞の増殖、侵入、転移と分化は新生血管の形成過程に肝心な一環で、しかもVEGFのコントロールを受け、直接に血管内皮細胞の増殖、侵入、転移と分化を抑制し、抗血管形成に対する最も有効な標的である。 カイジ清膏は薬用真菌のカイジ菌の抽出物で、その主要な活性成分は多糖蛋白で、多種類のアミノ酸と微量元素を含み、臨床で広範に腫瘍治療に応用したが、その確実なメカニズムについてまた完全に解明されていない。 本実験はカイジ清膏がVEGF誘発のHUVECs増殖と分化に対する作用について体外での研究を行った。カイジ清膏の濃度が0.1~10g/Lの場合、VEGF誘発の内皮細胞増殖は明らかな抑制され、用量効果関係を呈する。Matrigelの実験では、カイジ清膏の濃度が1g/Lの場合、VEGF誘発のHUVECs管様構造の分化を抑制できる;濃度は10g/Lの場合、体外で完全にHUVECsの管様構造の分化能力をブロックされることを認められた。上述の結果は、VEGF誘発の血管形成過程の肝心な部分がある程度カイジ清膏の抑制を受け、カイジ清膏はVEGF誘発の血管内皮細胞の増殖と分化を影響し、潜在的な抗血管形成作用を持つことを示した。カイジ清膏の作用メカニズムを更に深く検討するため、私達はフローサイトメトリーでカイジ清膏がHUVECs細胞周期に対する影響を測定し、結果としてカイジ清膏は特異的に内皮細胞がS期からG2/M期に入ることを阻止し、S期停滞を生じることを明らかにした。細胞が抑制状態にあるため、カイジ清膏群にはS期細胞の割合が高くなり、G2/M期細胞の割合は下がる。カイジ清膏は内皮細胞周期に対するコントロールのメカニズムについて、更に深く研究する必要がある。 本実験の結果は、カイジ清膏が体外で血管内皮細胞の新生血管造成に対する抑制作用を持ち、カイジ清膏の抗腫瘍メカニズムについての検討に新しい構想を提供した。体外実験は一定の限界性があり、実験結果は薬物自身のpH値、イオン濃度と浸透圧などの要素で影響される可能性がある。ですから、血管造成の体内モデルを使い、更に実証を行う必要がある。

(2003-07-16に原稿を受領、2003-09-08に校正)

参考文献

1郭躍偉、カイジの菌糸体多糖類に関する研究(Ⅱ):カイジ多糖類の構成とモル比の測定。中国薬科大学学報.1992:23(3):155~7

2庄毅、抗ガン新薬のカイジ散剤(顆粒)に関する研究、中国薬学雑誌.1998:33(5)273~5

3薛兆祥、朱永泉、沈鳴曙etal、カイジ散剤(顆粒)で悪性腫瘍582例を治療する臨床的分析.中国実用外科雑誌.1994:(14)6:382

4趙文生、金克カイジ併用化学療法が再発性非ホジキンリンパ腫に対する治療効果。中国腫瘍.1999:8(5):237~8

5趙紅星、張国政、金克カイジが老年末期肝臓癌に対する短期治療効果の観察。中国腫瘍.2001:10(5):305~6

6安徽省自然科学基安科医薬特定項目助成テーマ。NO 01043708 作者紹介:許戈良、男性、46歳、教授、修士課程指導教授。

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